七夕の願い  ~ギフテッドエピソード~

七夕の願い  ~ギフテッドエピソード~

「あんたなんか、産まない方が良かった。」感情的な声でママが叫ぶ。

「僕だってママの子供に生まれたくなかった。」と、息子も泣きながら反抗する。

私は二人のやりとりを聞きながら、黙ってスマホを見ていた。

罵り合う言葉の応酬が5分間続くと、私も我慢の限界になって

「産まない方が良かった、なんて6歳の子に言う言葉か、、、。お前が読み漁っている自閉症や、発達障害の本に、子供を怒鳴れ、と一行でも書いてあるのか?書いてないだろ?お前は母親失格だ。」と、参戦する。

「あんたは黙ってなさいよ。この子がクラスメイトを叩いて、その親に謝るのは私なの。あんたは授業参観くらいしか学校行かないからいいのかもしれないけど、私は違うのよ。この子を産んで私の人生、滅茶苦茶だわ。」

「あっちが先にちょっかい出してきたんだよ。僕は悪くない。ママのせいで僕の人生もメチャクチャだ。」

子供を叱るのに感情的になってはいけない。子供に夫婦喧嘩を見せてはいけない。、、、そう頭では理解しつつも、今日も感情的になって声を上げる日々。

いつか家庭崩壊してしまうのではないか。ひょっとするともうすでに家庭崩壊が始まってるのかもしれない、と頭によぎる。

 

 

息子は大人とのコミュニケーションは上手く取れるのだか、同年代の子、クラスメイト達とコミュニケーションが上手く取れなかった。コミュニケーションが取れないだけならまだ良いのだか、周りと喧嘩して手を出してしまうこともしばしばあった。

その度に、担任からママへ電話が来て、相手の親へ謝るように連絡先を教えてくれる。そんなことが月に数回あった。根が真面目なママは何冊もの発達障害の子の本を読み漁り、少しでも子供の為になるようにと様々なことを実践していったが、息子の手が出る癖は一向に収まる気配はなく、気を病み、育児ノイローゼ気味になった。

寝ている息子の姿を見て、「なんて可愛い寝顔なの。起きると問題起こすから、このままずっと寝ていてくれたら良いのに。」と良く言っていた。

 

 

 

普段の息子は大人しいし、人にも優しく出来る。息子と過ごしていても何事もなければ至って平和だ。しかし、その何事は突然やってくる。小さいことでも、周りからすればどうでも良いことでも、息子にとっては大事らしく人が豹変する。

例えばクラスメイトが息子に用があって、「ねえ。」と肩をポンと叩くと、息子は攻撃されたと思って反撃する。列から遅れた息子を「早くおいでー。」と忠告すると「今、行こうと思ってたところなのに。」と怒り出す。

小学校に入った頃よりは、手を出す回数が減ってきてはいたが、息子が成長したのでなく周りが息子に近づかないようになっただけなんだろう。と思っていた。

息子とお風呂に入って、息子の気が荒れていないのを確認し「友達を叩くと、嫌われるよ。仲間外れになるよ。」とさりげなくアドバイスすると「そうしたら僕もそいつを嫌うから構わない。」と気にとめる様子のない息子。

大人とはコミュニケーションが取れるのに学校では、なぜ周りと上手くやれないんだろう?物覚えは良いのに、なぜ手を出したらいけない。と簡単なことが分からないんだろうか。当たり前のことが出来ない子だな、と思う。

「誰だって叩かれたら痛いし嫌でしょう。自分だって嫌な気持ちになるでしょう。」と諭しても、息子はあーだこーだと反論する。

私もムキになって「勉強なんていくら出来ても意味がない。周りと仲良くする方がよっぽど大事。」と声をあげる。

 

 

そんな日々が続く中、息子が学校の七夕の行事で短冊に願いを書いた。

そこには思いもよらない願いが書いてあった。

「人を叩かないようになりたい。」

私は誤解していた。

息子は人を叩いたらいけない。ってことが分からないでいたのでなく、人を叩いたらいけない。ってことは分かっているけれど、自分の感情がコントロール出来ずにいただけなのかと。

周りに避けられ、両親に怒られ、頭で叩いていけない。と理解しつつも、自分でどうしようもなく手が出てしまい一番、人知れず葛藤しているのは息子だったのかもしれません。

私は療育の先生に言われた言葉を思い出しました。

「発達障害や、自閉症というのは目に見えません。周りから分かり難い症状です。だから周りから誤解されやすい。目の見えない子供に、なんで本が読めないの。と怒鳴る親はいませんよね。代わりに点字を学ばせたりさせるでしょう。でも発達障害の子達は、点字を与えられずに怒鳴られることが多々あります。その子にとって生まれつき出来ない事があるのです。」

私は点字を与えずに怒鳴る親だったのかもしれません。暗闇を彷徨う息子の手を取ることもなく、心の中でもがき苦しむ息子に気づきませんでした。

 

 

「人を叩かないようになりたい。」

2年前に願った息子の切なる想いは少しづつ叶いつつあります。

 

 

 

 

 

 

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